01 コロナ禍による変化
世界は新型コロナウィルスの猛威によって、大きく様変わりました。生き方も働き方も、人の価値観も変わってきたでしょう。
リモートワークやオンライン会議が増え、インターネット通販やフードデリバリーなどを利用すれば、食品から衣料品、生活雑貨等、ありとあらゆるものが届きます。家から一歩も出なくても事足りてしまうのです。
こうなると、「ひきこもり」との線引きはどこになるのでしょう?
家から出ないことだけをもって「ひきこもり」と定義することはできません。
インターネットを介せば、世界中の人と関わることも可能だからです。匿名の世界では音楽や文学、絵画など自由に発信することも可能です。経済活動だって十分成り立つでしょう。
これまで日本では、毎日会社(仕事)や学校に行くのが当たり前で、「行かない」という選択肢は悪いことのような、恥ずかしいことのような扱いをされていたと思います。だから、何らかの理由があって「行けない」人の心を更に追いつめることになっていました。でも、これからは価値観も変わっていくでしょう。ずっと家にいる人たちを否定することも少なくなるかもしれません。
02 価値観のギャップ
では、「ひきこもり支援」は必要なくなるか?と言うと、残念ながらそうではないと思います。
社会の価値観は徐々に変わるでしょうが、人の心の変化は簡単には望めません。偏見や差別がいけないことだとは皆が理解していることなのに、それが無くならない現状と似ています。特に昭和の高度成長期に活躍されていた世代の価値観と、その後の不景気の中で努力が必ずしも成功に繋がらなかった世代の価値観には大きなギャップがあります。
逆に、親世代の価値観を遵守しようとするあまり現実との差に押しつぶされていることもあります。8050問題の世代だけではなく、もっと若い親子の間においても、親の価値観の通りに生きられなかった子たちの悲しい悲鳴が聞こえます。
03 コロナ禍でのギャップ
また、コロナ禍は新たな価値観のギャップを生み出しました。
学生も社会人も直接会ってコミュケーションを取る機会が大幅に減りました。メールなどは大変便利ではありますが、表情の変化や声のトーンは伝わりません。匿名性の高いSNSでは簡単に人を傷つけることも可能になってしまいました。そのような緊張状態が続くことを避けるために、結果として自分の価値観とより近い人とだけ繋がるという極端な事態も起きています。
今までなら近隣住民や同僚や学友など、必ずしも価値感が一致しない人たちとも時間空間を共有しなければいけなかったものが、その経験が減ってしまう。これはその耐性が低くなるということです。
その為にさらに自信を失い、全てから引きこもるか、価値観の違う対象に攻撃性を見せることもあるかもしれません。
人は誰でも、そこにいるだけで価値があるのです。自分が希望する人生を進んで良いのです。だけど、そんな基本的なことも見えなくなるほど自信を喪失している人たちがいます。
ひきこもりの問題は、家から出ないことではありません。自分に自信が持てないことです!
ただ、ひきこもりケースの中には、元々発達障害などがあって生きづらさを抱えていたり、その中で頑張りすぎたために精神疾患を併発していることもあります。その場合は、医療や福祉の手立ても取り入れながら改善を目指すことになります。
04 何故NPO法人として活動をするのか?
県や各市町村などの行政機関でも「引きこもり支援」をしています。なのに何故NPO法人として活動をするのか?
それは、私も社会福祉士・精神保健福祉士として仕事をしてきたからです。
生活困窮者自立相談支援事業などで、引きこもり支援をすることもありました。しかし、引きこもり傾向で意欲にも波がある彼らがいつでも「ベスト」の状態で受診や見学に行けるとは限りません。約束してもキャンセルになることもしばしば。繋ぎ先もどこでも良いというわけではなく、それぞれの人の個性や特性、ご希望を伺って通所できるようになったとしても、そこでまた自信を無くすようなことがあれば、また元の状態に戻ることもあります。だからこそ、その受け皿となる社会資源になりたいと思いました。
彼らにとって、一番大切なのは「自信回復」です。
私たちは、本人が「行ってみようかな?」と思った時に、可能ならその日の内にでも見学に行ける場所が欲しいと思いました。「行ってもいいかな?」と思える日は、そんなに多くはないと思うからです。
また、私には知的発達障害の息子がいます。特別支援学校高等部を卒業後、障害者就労継続支援事業所に通所していましたが、自信を失うことがあり7年目に退所しました。他の事業所に通所させることも考えましたが、傷ついた息子に無理強いするよりも、息子にとって安心できる居場所を作りたいと思いました。
05 NPO法人になって3年
NPO法人になって3年。ようやくその居場所を持つことができました。「(仮称)のびのび」です。「のびのび」とは、のびのびできる場、のんびりできる場、みんなが伸びていく場との願いを込めた名称で、利用者さんの発案から決まったものです。
ここでは、一番安心な自宅から一歩前進することを目的としています。一足飛びに就労したい気持ちは山々でも心や体力が追い付かない場合もあります。その為には、就労を目指したスモールステップが必要だと考えます。それは作業活動だけではなく、様々な交流などを通して自分に自信をつけていくことも大切なことです。
特定非営利活動法人あじさい園では、これまで市の公共施設をお借りして相談事業や生きがいづくり事業、就労支援事業などをしてきました。
今後は、この「のびのび」を拠点として活動を充実させていきます。
06 法の狭間にいる人たち
しかし、最初から障害福祉サービス(障害者就労支援)事業所の設立を目指さなかったのはなぜか?
引きこもりの人の中に 「法の狭間にいる人たち」がいるからです。
不登校から長期引きこもりになっているけど、受診したことがなく「障害」とも「疾患」とも診断がついていない人たち。
彼らには診断書(医師意見書)が出されないので障害福祉サービスは受けられません。障がい受容も簡単にできる人ばかりではありません。
だからそれまでの間、「しばり」がなくても行ける場所が欲しいと思いました。また私たちが支援するのは、障がいや引きこもり傾向の本人のみではありません。
彼らの支援には、ご家族や地域のご理解が必須だと考えます。だからその方たちへの支援や啓発が大切になります。
それをするために敢えて「地域活動支援センター」を目指しています。
07 彼らの安心のため
今は補助金や助成金や寄付などと作業収入のみで運営しているため、本人への工賃は若干額だし、ご家族やボランティアの助けで、何とか活動している状態です。
せっかく勇気を振り絞って初回相談ができたとしても、すぐに活動に参加できる人ばかりではありません。
一歩を踏み出すのに時間がかかる人もいます。だけど、経済的理由で自立の一歩を踏み出すチャンスを逃す人がいるとしたら大変残念なことです。
彼らが安心して過ごし、ここから更に社会に巣立って行けるような居場所でありたいと願っています。
皆様の応援をよろしくお願いいたします。
(2022年度 補助金・助成金)
・古賀市コミュニティ活動補助金
・太陽生命厚生財団 事業助成金
2011年 3月 |
精神疾患当事者の家族交流会(あじさい園)として活動開始。 |
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2014年 4月 |
「あじさい園」発足。 |
2019年 8月19日 |
法人設立 |
2022年 10月1日 |
「のびのび」開所 |
2023年 8月 |
「地域活動支援センターのびのび」開所 (古賀市、新宮町と事業委託契約) |
2024年 5月 |
(福津市と事業委託契約) |
役職 | 氏名 | 資格等 |
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理事長 | 山下悦子 | 社会福祉士・精神保健福祉士 |
理事 | 江崎京子 | |
理事 | 森田由紀 | |
監事 | 平田三喜男 |
法人概要
法人名 | 特定非営利活動法人 あじさい園 |
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代表理事 | 山下 悦子 |
所在地 | 〒811-3113 福岡県古賀市千鳥3-2-3-304 |
設立 | 2019年8月19日 |
TEL | 092-982-0932 080-4276-8349 |
のびのびFAX | 092-982-0934 |
事業内容 |
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